それではみなさん、さようなら。 楽しかったでちゅよー。

このウソの一日と同じように。 二度と再現できないこの記憶を思い出にして。

以前、一日だけの幻を惜しむものもいました。 でもそれは違うのです。 わたしたちは毎日を惜しむべきなのです。

日々個別の意識として生きるワタシたちが、 なんの理由もなく手を取り合うコトと何も変わらない奇跡でつた。

それはなんて幸福で、そして意味のないコトなのでしょう。 蝋燭の炎のゆらめき。フィラメントの瞬きと変わりません。 そして―――

あなたたちはこの４月１日という時間、 本来手には届かない“物語”を迎えました。

でも―――たまにはこんな偶然もあるのです。 理性のない猿が美しい脚本を作るように。 自然が人間の美意識の枠組みに合う瞬間のように。

本来交わらない、つながらない、筋書きにならない物語。 本来なら気バラバラに終わってバラバラにすれ違うだけ結末。

無限の猿定理…… 猿にタイプライターを与えた時、いつかは偶然シェイクスピアの脚本が出来あがる…… という、あの理論のようなものなのでつ。

それらは交わっているようで交わっていなかった。 アナタたちはこのテレビのチャンネルが変わるごとに、 たまたま偶然、画面がつながっていただけのこと。

いってしまうとテレビ番組でちゅね。 士郎クンは４チャンネルの住人。 ミスターＫは６チャンネルの住人、といったところでち。

わかりまちゅか？ なに一つ同じ世界の住人はいなかったのでちゅ。

今日このテレビに映っていたアナタたちは、 実はそれぞれが個別の世界の住人、個別の可能性だったのでちゅ。

フラットくんとエルメロイ二世の言葉を借りるなら観測者…… 多くの可能性、多くの偏光世界を見るコトでカタチをつなげていたものでち。

こんにちは。アタシは観測系ベイビー、カレンちゃん。 今日一日、このテレビを見ていたものでち。

―――おや？ こんなコトもあるのでちね。チャンネルがきっかり合いまちた。

ガチャガチャガチャガチャ。 ガチャガチャガチャガチャ。

ザッ……ザザッ……ザーーーーーー